螺旋状らせんじょう)” の例文
縄括なわぐくりにした二ちょうの山駕、それをかついでいるのも侍だ。時折、肩を代え、肩を代えして、螺旋状らせんじょうにうねッた道を峠のいただきまで登ってきたが
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南側から入って螺旋状らせんじょうの階段をのぼるとここに有名な武器陳列場がある。時々手を入れるものと見えて皆ぴかぴか光っている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
螺旋状らせんじょうの階段はおのに断ち切られてへやのまんなかに横たわっており、数人の負傷者らは既に息絶えており、生命のある者は皆二階に上がっていた。
が、今は後めたいよりもむしろ誇らしいくらいだった。彼女はいつかふとり出した彼女の肉体を感じながら、明るい廊下の突き当りにある螺旋状らせんじょうの階段を登って行った。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
格子縞に曲線が螺旋状らせんじょうからみ付けられた場合、格子縞は「いき」の多くを失ってしまう。縦縞が全体に波状曲線になっている場合も「いき」を見出すことはまれである。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
それが、空の光の照明度がある限界値に達すると、たぶん細胞組織内の水圧の高くなるためであろう。螺旋状らせんじょうの縮みが伸びて、するすると一度にほごれ広がるものと見える。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼が大根は二股三股はまだしも、正月の注連飾しめかざりの様に螺旋状らせんじょうにひねくれからみ合うたのや、章魚たこの様な不思議なものを造る。彼の文章は格に入らぬが、彼の作る大根は往々芸術の三昧に入って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
螺旋状らせんじょう梯子口はしごぐちから二そうへかけ上がり、それより上は階段かいだんがはずされてあるので、鈎縄かぎなわ、あるいは数珠梯子じゅずばしごなどを投げかけ、われ一ばんりとよじのぼっていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
バラバラと峡のがけから細道ほそみちりてくる少女が見えた、上から手をのばしてわらべをうけとる。その敏捷びんしょうなことおどろくばかり、螺旋状らせんじょう細道ほそみちおくへ奥へと見ているうちに走りだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)