がえる)” の例文
南側の方には食用がえるを飼う池があり、北側の方には、衝突事故で死んだ人々の供養くようのために、まだ真新しい、大きな石の国道地蔵が立っているばかり。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ただときどき、蟋蟀こおろぎがもの悲しく鳴いたり、食用がえるが近くの沼で、寝ごこちが悪くて急に床のなかで寝がえりをうったかのように、咽喉のどをならしているだけだった。
それから例の鉄の棒を持ち直して、二番目のあまがえる緑青ろくしょういろの頭をこつんとたたいて云いました。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「千駄木の螢沢と来た日にゃ、林と田圃と葱畑ねぎばたけと、馬小屋ばかりだ。弁当持ちで探して歩いたって、ろくなひきがえるもいねえ。ましてお妙の物思いの相手になるようなのは——」
で、警察は、この風評を知らぬではなかったけれど、迂闊うかつに手出しをして、赤坊の泣き声が食用がえるだった様な、物笑いの種になることをおそれ、鳴りをしずめてなり行きを見ていた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
コートも着ない私の袖は、ぐっしょり濡れてしまって、みじめなヒキがえるのようだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
がまがえるが虫を捜すような眼つきだった
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ヒョロがえるめ!」
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まつの木やならの木の林の下を、深いせきが流れてりました。岸にはいばらやつゆ草やたでが一杯いっぱいにしげり、そのつゆくさの十本ばかり集った下のあたりに、カンがえるのうちがありました。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「車海老やったら恐いことないけど、食用がえるは恐かったわなあ、雪子ちゃん」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)