薄蒼うすあお)” の例文
御堂みどうの屋根をおおい包んだ、杉の樹立の、ひさしめた影がす、の灰も薄蒼うすあおう、茶を煮る火の色のぱっと冴えて、ほこりは見えぬが、休息所の古畳。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二本の足を硬くそろえて、胴と直線に伸ばしていた。自分は籠のわきに立って、じっと文鳥を見守った。黒い眼をねぶっている。まぶたの色は薄蒼うすあおく変った。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし薄蒼うすあおいパイプの煙は粟野さんの存在を証明するように、白壁しらかべを背にした空間の中へ時々かすかに立ちのぼっている。窓の外の風景もやはり静かさには変りはない。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
電池と真空ポンプと測定装置とのほかには、ほとんど室のかざりになるような器械はなく、がらんとしたうすら寒い地下室であった。実験室全体の感じが薄蒼うすあおくすすけていた。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
したたるように色づいた皮が、ナイフの刃をれながら、ぐるぐるとけて落ちる後に、水気の多そうな薄蒼うすあおい肉がしだいに現われて来る変化は彼に一年以上った昔をおもい起させた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)