薄刃うすば)” の例文
まず、いきなりいかりをザンブと投げこんで、おう薄刃うすばのだんびらを持ち出す。——凄文句すごもんくよろしくならべて、約束の駄賃だちん以上な客の懐中物をせびるのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だってあの男は、事件の室から出て来たのだろう。そして薄刃うすばの短刀をもって君に切り懸ったのじゃないか」
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「でも、あの薄刃うすばで斬ったようなきずはどうしたもんでしょう。鷲や鷹ならば、爪でグサリと掴みかかるにちがいないから、一つや二つの爪傷ではすみますまい」
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「さいかくぎもけずる、薄刃うすばの小刀を、いでくれと頼まれましてあたしが磨ぎました」
そして、船頭の一人は、自分の肌から抜き取ッた胴巻を口にくわえ、手に薄刃うすばのだんびらをひっさげていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、函の中に、彼が殺人に使った薄刃うすばの短剣が血にまみれたまま入っていたのですわ。そして血染の彼の指紋まで出ていましてよ。その上、あの日お父さんの部屋からせた小函を
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
木剣とはいいながら枇杷びわしゃくすん薄刃うすばであるから、それは、真剣しんけんにもひとしいものだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼のいだいていった薄刃うすばの短刀に血をちぬらず、あの重い砲丸を投げつけて目的を達したことは、のちに捕縛されたとしても、短刀をまだ使っていないという点で、犯行を否定するつもりだったという。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かねて隠し持っていた薄刃うすば作りの短剣がいきなり卓の厚板へぽんと突き立てられた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに対する人物は、卓子をへだてて立っていたが、その人物は頭の上から黒いきれをスッポリかぶっていた。そして右手には鋭い薄刃うすばのナイフをかまえて、イザといえば飛び掛ろうといういきおいを示していた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と帆村は一振の薄刃うすばの短刀をポケットから出してみせた。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)