蒼古そうこ)” の例文
何故だろうか? 他なし今日の詩人にとって、文章語そのものが既に過去に属し、蒼古そうことして生活感のないものに属するからだ。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
また菊の香という名詞の下には「の馥郁ふくいくたるがごとく」という文字とか、また温雅なる色彩とか、蒼古そうこな感じとかいうような
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
前者は優麗で美しく、後者は学究的で蒼古そうこな趣がある。この種のレコードはいずれをいずれと優劣は定め難い。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
朝鮮金剛のしょうに私たちは当面したのである。この渓谷のいさぎよくしてのどかな、またこの重畳ちょうじょうたる岩峭がんしょうの不壊力と重圧とは極めて蒼古そうこ墨画すみえ風の景情である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
徒然草に見える那蘭陀寺ならんだじあたりのあとである。梅ばやしをいて、六波羅地蔵の蒼古そうことした堂が見える。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この歌は、もっと上代の歌のように、蒼古そうこというわけには行かぬが、歌調が伸々のびのびとして極めて順直なものである。家持の歌の優れた一面を代表する一つであろうか。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ほとんどその趣きを異にして居ると思うのです、どんなに違うか、さアこれもちょっと説明が六つかしい、『万葉』が好いとして取る点は、詞は蒼古そうこだとか、思想が自然だとか調子が雄渾ゆうこんだとか
子規と和歌 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
蒼古そうことでも評したいほど枯れた文字のうしろに燃えていると園は思った。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
日本は海から見た時のみ蒼古そうことしてゐる。
そこは、市外に近い、蒼古そうことした禅刹ぜんさつの門だった。十河存保そごうまさやすの陣所として、鉄槍や武者の影に埋まっている。宗易は、前後を囲まれながら、槍ぶすまの門を、静かに通った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歌も音楽も少しも中国的ではないが、蒼古そうこ雄大な人に迫る美しいものを持っている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
その綜合的美観はその位置と丘陵の高さとが、明らかにして洋々ようようたる河川の大景たいけい相俟あいまって、よく調和して映照えいしょうしているにある。加えて、蒼古そうこな森林相がその麓からうちのぼっている。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
一首に主格も省略し、結句に、「印南国原」とだけ云って、その結句に助詞も助動詞も無いものだが、それだけ散文的な通俗を脱却して、蒼古そうこともうべき形態と響きとを持っているものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
家のそばには蒼古そうことした鳥居がある。そして日頃は、老いたる禰宜ねぎと家族が住んでいた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ブッシュは蒼古そうこな雄大さがあり、いずれとも言い難いが、演奏はカペエに一日の長があり(コロムビアS一〇九三—七)、録音はブッシュの方に新しい良さがある(ビクターJD九二五—九)。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
すると蒼古そうこたる転法輪寺の大屋根と、一りゅうの錦旗が見え、それから上は峰もない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蒼古そうこな四天王寺の輪奐りんかんもそれを援ける。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)