いき)” の例文
窓は閉めて、空気の通う所といっては階子の上り口のみであるから、ランプの油煙や、人の匂や、変に生暖い悪臭いいきれた気がムーッと来る。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
目「なに寒い……当月は八月である、いまだ残暑もうせせず、夜陰といえどもいきれて熱い事があるのに、手前は頭巾を被りたるは余程寒がりと見ゆるな」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……二三度、四五度、繰返すうちに、指にも、手にも、はては指環の緑碧紅黄りょくへきこうこうの珠玉の数にも、言いようのない悪臭がいきかかるように思われたので。……
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……二三度、四五度、繰返すうちに、指にも、手にも、はては指環の緑碧紅黄りょくへきこうこう珠玉しゅぎょくの数にも、言ひやうのない悪臭あくしゅういきかかるやうに思はれたので。……
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「それは表門でござった……坂も広い。私が覚えたのは、もそっと道が狭うて、急な上坂のぼりざかの中途の処、煉瓦塀れんがべいが火のように赤う見えた。片側は一面な野の草で、いきれの可恐おそろしい処でありましたよ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日南ひなたいきれる酢のにおいに、葉も花片もえんとす。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)