かば)” の例文
鎌倉殿の弟君といえば、誰もすぐかば殿とのかと合点する。その範頼のあることを知っても、義経という弟もあることは、まだ世間に知る者はまれだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陶はそこでかばむしろで菊を包んで、それを数台の車に載せて何所かへ往ったが、翌年の春の中比なかごろになって、南の方からめずらしい種を持って帰ってきた。
黄英 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
芭蕉ばしょう翁は「木曾きそ殿と背中あはせの寒さかな」と云ったそうだが、わたしはかば殿と背中あわせの暑さにおどろいて、羽織をぬぎに宿に帰ると、あたかも午前十時。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それ、ここから見えるあの田甫たんぼぢや、あれが、この村の開けないずつと往昔むかしは一面の沼だつたのぢや、あしかばが生え茂つてゐて、にほだの鴨だのが沢山ゐたもんぢや。
黄金の甕 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
そよぎ囁け、かばの葉よ。