葉巻シガー)” の例文
旧字:葉卷
二人のすう二つの大きな葉巻シガーが舟の中で紅色の舷灯げんとうのように燃えた。師父ブラウンはその葉巻シガーをちょっと口から取ってこう云った。
薄き眉ビリと動くと共に、葉巻シガーの灰ふるひ落としたる侯爵「山木、其の同胞新聞と云ふのは、篠田何とか云ふ奴の書きるのぢやないか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ある日、秋濤はいつものやうににほひのいゝ葉巻シガーくはへて教室に入つて来たが、平素ふだんにない生真面目な調子で、皆の顔を見た。
賜暇しか帰朝中のヴェルトネル駐仏大使らの一団が、葉巻シガーをくゆらして酒杯グラス片手に、賑やかに笑い興じていた。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
上海シャンハイ、英租界の大道路、南京路ナンキンルー中央なかほどのイングランド旅館ホテルの一室で、ラシイヌ探偵と彼の友の「描かざる画家」のダンチョンと葉巻シガーを吹かしながら話している。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そう云って黒塚氏は、葉巻シガーの吸い差しを銀の灰皿の中へポンと投げこんで、両腕を高く組みあげた。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
あだに費やすべきこの後の日数に、心慰みの一つにても多かれ。美しき獲物ぞ。とのどかに葉巻シガーくゆらせながら、しばらくして、資産家もまた妙ならずや。あわれこの時を失わじ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
葉巻シガーを口にし、新聞紙を膝にのせながら、あるいは広告を見つめたり、時には部屋の中の雑然たる人々を観察したり、あるいはまた煙で曇った窓ガラスを通して街路をうち眺めたりして
群集の人 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
誰かが葉巻シガーを注文した時分には、もう長いあいだ私たちは話し合っていたので、おたがいにきかかっていた。煙草のけむりは厚い窓掛けに喰い入って、重くなった頭にはアルコールが廻っていた。
「私は葉巻シガーはやりませんから」
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ふウむ」と侯爵は葉巻シガーけむよりも淡々あは/\しき鼻挨拶はなあしらひ、心は遠き坑夫より、直ぐ目の前の浜子の後姿にぞ傾くめり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
世界第一の神秘国であり世界第一の野蛮国である熱帯亜弗利加アフリカを踏破して、世界最大の探検家としてその名を古今に謳われているスタンレーは葉巻シガーをくゆらせなが
一息にここまでまくし立てると、あとが続かなくなつたのと、葉巻シガーけぶりが咽喉に入つたのとで、大森氏は一寸言葉を切つて、大きなくさめをした。そして苦しさうに涙を目に一杯溜めて
葉巻シガーをふかしながら一人の紳士がれの貴婦人に話しかける。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)