だけ)” の例文
「笑いだけ」というのがある。別名を踊り茸ともいう。毒きのこの一種には違いないけれど、ただの毒きのこと毒きのこが違う。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
笑いだけか何かのエキスを混ぜてあったんじゃないか、と僕は今でも考えているのですが、もしそうだとすれば、僕らはうまうまと陳さんのハメ手に引っかかったわけです。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ますだけというのは広葢ひろぶたほどの大きさで、切って味噌汁みそしるの中へ入れて煮るとまるで蒲鉾かまぼこのようだとか、月見茸つきみだけというのは一抱ひとかかえもあるけれども、これは残念だが食えないとか
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まいだけはその形細き珊瑚さんごの枝に似たり。軸白くして薄紅うすべにの色さしたると、樺色かばいろなると、また黄なると、三ツ五ツはあらむ、芝茸はわれ取って捨てぬ。最も数多く獲たるは紅茸なり。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生垣いけがきの根にはひとむらの茗荷みょうがの力なくのびてる中に、茗荷だけの花が血の気少ない女の笑いに似て咲いてるのもいっそうさびしさをそえる。子どもらふたりの心に何のさびしさがあろう。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
虎之介は笑いだけを食ったようにダラシなく相好をくずして
わらだけなんて、そんなものを呑ませて、萬一間違ひがあつてはと、人の良い卯八がそつと菊次郎に耳打をしたんです」
昔金に飽かして手に入れた、わらだけの粉を和蘭オランダ渡りの赤酒せきしゅに入れて、皆んなに一杯ずつ呑ませ、あらん限りの馬鹿な顔をさせてみるつもりだったのです
私は一の思ひ出に皆んなを馬鹿にしてやらうと思ひました。昔金にかして手打入れた、わらだけの粉を、和蘭渡おらんだわたりの赤酒に入れて、皆んなに一杯づつ呑ませ、あらん限りの馬鹿な顏を