若殿わかとの)” の例文
すれば、かうなってしまうたうへは、あの若殿わかとの嫁入よめいらッしゃるがいっ分別ふんべつぢゃ。おゝ、ほんに可憐かはいらしいおかた彼方あなたくらべてはロミオどのは雜巾ざふきんぢゃ。
江戸の都が、茫々として無人の原であった時分に、このあたりは、直衣狩衣のうしかりぎぬ若殿わかとのばらが、さんざめかして通ったところである。源頼朝はここへ二十万騎の兵を集めたそうな。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
若殿わかとの樣には去廿三日晝九ツ時より御くだしにて、晝の内十二度夜二十五度位の儀にて、八ツ時終に御卒去被遊候段、我々式は翌朝承候位にて、殘念如何とも申樣のあるものにて無御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
カピ妻 はて、むすめよ、つぎ木曜日もくえうびあさはやう、あの風流みやびな、立派りっぱ若殿わかとののパリスどのが、セント・ピーターの會堂くわいだうで、めでたう其方そなた花嫁御はなよめごにおやるはずぢゃ。
はれ、無慚むざんな! こゝに若殿わかとのころされてござる、のみならず、二日ふつかはふむられてござったヂュリエットどのが、ついいまがたなっしゃれたやうにながして、ぬくいまゝで。