かりそめ)” の例文
かりそめにもぬしある人のものから艶書を持って来て返事をやるような文治と心得てるか、なんの為に文治の所へ来て居る、わりゃア畳の上じゃアしねねえから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かりそめの旅の道伴みちづれでありながら、その死床に侍して、介抱をしたり、遺言を聞いてやると云ふことは、何と云ふ不思議な機縁であらうと、信一郎は思つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
こういう書面を、当の書中の本人がマダ健在であるのに、かりそめにも書肆たるものが他事ひとでに渡すというはしからん話で、あまつさえ額面に表装するというは言語道断である。
かりそめにも嘘をつかじとて文学にも理想を排したるなるべく、た彼が愛読したりといふ『杜詩とし』に記実的の作多きを見ては、俳句もかくすべきものなりと自ら感化せられたるにもあらん。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かりそめの旅の道伴みちづれでありながら、その死床に侍して、介抱をしたり、遺言を聞いてやると云うことは、何と云う不思議な機縁であろうと、信一郎は思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かりそめにも殿様のお側近くつとめをする鹽原角右衞門、炭屋の下男に知己しるべは持たんわい、成程今をる事十五ヶ年以前、阿部家を出て上州東口の小川村に八ヶ年程浪人していた其の折
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かりそめにも不快の感を与えるような顔を決してしなかったそうだ。
青年は意識が帰つて来ると、此のかりそめの旅の道連みちづれの親切を、しみ/″\と感じたのだらう。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
又「仮令たとえ見捨てると云ったにもせよ、何故かりそめにも亭主の横面をつという事が有るか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
青年は意識が帰って来ると、かりそめの旅の道連みちづれの親切を、しみ/″\と感じたのだろう。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
辛抱次第で行々ゆく/\暖簾のれんを分けて遣る、其の代り辛抱をしろ、かりそめにも曲った心を出すなと熟々つく/″\御意見下すって、あんまり私を贔屓ひいきになすって下さいますもんだから、番頭さんがそねんでいやな事を致しますから
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)