能事のうじ)” の例文
腕さえあれば能事のうじおわれりというてもよい。工場では人間がいらないほどあっても、その人間は機械の一部分のようなものである。
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日の要求に応じて能事のうじをはるとするには足ることを知らなくてはならない。足ることを知るといふことが、自分には出来ない。自分は永遠なる不平家である。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
但し今の世間に女学と言えば、専ら古き和文を学び三十一文字みそひともじの歌を詠じて能事のうじおわるとする者なきに非ず。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
年中あくせくとして歳月の廻るに支配されている外に何らの能事のうじも無い。次々と来る小災害のふせぎ、人をとぶらい己れを悲しむ消極的いとなみは年として絶ゆることは無い。水害又水害。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それ以外に、何のわきまえもござりませぬ。そのかわり事しあれば、尾張より美濃近江路おうみじの敵地もこえて、三日のうちには御所の御垣みかきまでいつなと馳せ参ずるが信長の能事のうじにござります。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが出来ましたなら、現代人の芸術の能事のうじおわれりではございますまいか。
尤もそれで能事のうじおわれりと思っているようなら賢夫人である。
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
病毒少くして揚代あげだいやすければ醜業婦の能事のうじおわるなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
花が花と見え、水が水と映り、人物が人物として活動すれば、画の能事のうじは終ったものと考えられている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
無論さ。大杯の酒に大塊の肉があれば、能事のうじおわるね。これからまた遼陽りょうようへ帰って、会社のお役人を
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我輩とても敢て多弁を好むに非ざれども、唯いたずらに婦人の口をきんして能事のうじ終るとは思わず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あなた方がたっとぶことは、おのれでなくして腕である。腕さえあれば能事のうじおわれりというてもよい。工場では人間はいらないほどあってもその人間は機械の一部分のようなものである。
おはなし (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私もまた、これが人間唯一の目的で一身の品行修まりて能事のうじ終るなんて自慢をするような馬鹿でもないとみずから信じて居るが、さて又これが妙なもので、社会の交際に関係する所ははなはだ広くて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)