肩胛骨けんこうこつ)” の例文
五十嵐博士の負傷は、左背肩胛骨けんこうこつを貫き、左肺臓に達する刺傷ししょうで、兇器は刃渡り三センチの鋭い諸刃の短刃と鑑定された。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
右の手くびの一部分もだいぶ擦りむけていて、背中一面も同様であったが、ことに肩胛骨けんこうこつのあたりがひどかった。
小さい右肩いっぱいに太い竿がどっしりと喰いこんで来て、肩胛骨けんこうこつのあたりがぽきぽきと鳴るような気がする。
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
彼らの胸甲の一つは、ビスカイヤン銃弾で左の肩胛骨けんこうこつあたりに穴を明けられたのが、いわゆるワーテルローの博物館という陳列品のうちに今日存している。
アンダスンの弾丸が——というのは最初に船長を射撃したのはジョーブの奴だったからであるが——肩胛骨けんこうこつを折って肺に触れていたが、ひどいことはなかった。
それから、医師の検案書によると、後頭部と肩胛骨けんこうこつの部分とにひどい打撲傷があるばかりで、火器や刃物の傷痕きずあともなければ毒殺の形跡もまったくないというのです。
五階の窓:02 合作の二 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
愉快にも余は臀部及び肩胛骨けんこうこつに軽微なる打撲傷を受けしのみにて脳震盪の被害を蒙るにはいたらなかつたのであるが、余の告訴に対し世人は挙げて余を罵倒したのである。
風博士 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
右の手頸の一部分もよほど皮膚が擦りむけており、それからひきつづいて右腕の背部一面に皮膚が擦りむけていたが、とりわけ、最もひどかったのは、肩胛骨けんこうこつの部分だった。
彼は私の膝蓋骨を数回前後に動かし、この震動的なねるような動作を背中、肩胛骨けんこうこつ、首筋と続けて行い、横腹まで捏ねようとしたが、これ丈はくすぐったくってこらえ切れなかった。
濃い紺色のジョウゼットの下に肩胛骨けんこうこつの透いている、傷々いたいたしいほどせた、骨細な肩や腕の、ぞうっと寒気を催させるはだの色の白さを見ると、にわかに汗が引っ込むような心地もして
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
死骸を少し動かして、えりのあたりをはだけて見ると、左の背——ちょうど肩胛骨けんこうこつの下のあたりに、小さく肉の炸裂さくれつしているのは、ここからしんぞうまで、ひとえぐりにした刃物のあとでしょう。
本館からとり寄せた綾子夫人の洋服を、この壁の上にしるし出された人型ひとがたの上に重ねてみますと、正しくピタリと大きさが合うではありませんか。肩胛骨けんこうこつ臀部でんぶのあたりは特によく一致していました。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二つの肩胛骨けんこうこつの間のあらわな肌の上に押し当てられた一握りの雪は、急に皮膚排出を抑止してしまったので、その結果数年来の病芽がにわかに激発したのだった。
愉快にも余は臀部でんぶ及び肩胛骨けんこうこつに軽微なる打撲傷を受けしのみにて脳震盪のうしんとうの被害を蒙るにはいたらなかったのであるが、余の告訴に対し世人は挙げて余を罵倒したのである。
風博士 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「かねて話したとおりに、これは肩胛骨けんこうこつから出た肉腫で、肩の骨は勿論、右の手全体切り離さねばならぬ大手術だからねえ。こんなに衰弱して居て、手術最中にしものことがあるといけない」
肉腫 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
その外、背骨せぼねの曲り方、肩胛骨けんこうこつの開き工合、腕の長さ、太腿の太さ、或は尾骶骨びていこつの長短など、それらの凡ての点を綜合して見ますと、どんな似寄った背恰好の人でも、どこか違った所があります。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)