肛門こうもん)” の例文
すると私は、オブラートにのりをつけたものを持っていて、その風船の肛門こうもんのようなところへ円い色紙をペタリと貼りつける。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
牢死人の死体は荷物のように扱われ、鼻や、口や、肛門こうもんやには綿がつめられ、箱に入れられて町の病院に運ばれ、そこで解剖されるのである。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
「たつた一つ、肛門こうもんに油を塗つてあつた。ほんの少しであつたが、これはなどを患つてる人によくある事だから、あまり氣にも止めなかつたが——」
消毒の係りはただちに疵口きずぐちをふさぎ、そのほか口鼻肛門こうもん等いっさい体液の漏泄ろうせつを防ぐ手数てすうをとる。三人の牧夫はつぎつぎ引き出して適当の位置にすえる。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こういう書きだしで、見廻りにいってみると、五十四人が死んでおり、それがみな焦げた木の枝で躰腔たいこうを突き刺されているのを発見した。口、肛門こうもん鼻腔びこう
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お春の云うところにると、彼女は先月の下旬に、尼崎あまがさきの父がの手術で西宮の某肛門こうもん病院に入院した時、二週間ばかり暇を貰って父に附き添っていたのであったが
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
脇差を抜き、ねらいすましていた彼の一せんはとたんに、大虎の肛門こうもんをグサと鍔元つばもとまで突き刺していた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは肛門こうもん周囲炎というやつですよ。こうなっては切るよりほかないでしょうね。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鏡を出して瞳孔どうこうを眺めていた医者は、この時宵子のすそまくって肛門こうもんを見た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうしてといってネ、この方、つまり……あれなのよ、が悪いんでしょ。それでラジウムでいているんですわ。判るでしょう。つまり肛門こうもんにラジウムを
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
耳の穴や肛門こうもんまでも丁寧に檢査して見ましたが、どうしても、病氣で死んだか、引付けたまゝ死んだとしか思はれない樣子に、平次もさすがに腕をこまぬくばかりです。
管営かんえいの面前で裸体にされ、四つン這いにされ、肛門こうもんを金棒でほじられ、やれ舌を出せの、前の物の毛をれのと、あらゆる非人間的な侮辱ぶじょく翻弄ほんろうに会うものが通例なのだが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして運悪くも、ちょうど彼女の肛門こうもんが彼の顔の真下にあったので、ちょうから出る息が一直線に吹き上げたのだが、その臭かったことと云ったら、いかな猫好きもその時ばかりは
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もう幾日も前から、肛門こうもんの痛みは気にしていたし、熱も少しは出ていたのであったが、見たところにわかに痔瘻とも判断できぬほど、やや地腫じばれのした、ぷつりとした小さな腫物はれものであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)