聴衆きゝて)” の例文
旧字:聽衆
火焔ほのほの様な雄弁でおべなすつた時には、何故なにゆえとも知らず聴衆きゝての多くは涙に暮れて、二時間ばかりの説教が終つた時には、満場だ酔へる如き有様でした
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
聴衆きゝてはそれを聞くと、どつと一度に笑ひ出した。可哀かあいさうに冷かしを言つた男は地獄の住民にされてしまつたのだ。
聴衆きゝて多勢おおぜい出来ましたので、お店の方も皆な寄って講釈を聞きました
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女史がいつも出演する折のやうに、その聴衆きゝては会場にぎつしり詰つて、身動きの出来ない程であつた。
聴衆きゝてはそれを聞くと、てんでに恥しさうに掌面てのひらでそつと腹を撫でおろして居た。鉄面皮な胃の腑はそんななかでも平気で呼吸いきをしてゐた。衛生学者は一段と声を高めて
よく出来た場合は聴衆きゝてよりも演者やりての方がずつと気持のいゝもので、基督のやうな真面目な男でさへ、名高い山の上のお説教を済ましたのちは、すつかりい気持になつて
ブライアン氏はそこで一ぢやうの演説をした。そしてすつかりい気持になつて、自分の椅子へ着くと、聴衆きゝてのなかから農夫ひやくしやうらしい人のささうな顔をした男が一人出て来た。
と、江戸ツ子自慢の聴衆きゝてが嬉しがりさうな事を言つて、ぴどく尾崎氏の演説をきめつける。
肝腎の藤村検校けんげうが出る頃には、聴衆きゝては一人も居ないといふやうな事が少くなかつた。