総崩そうくず)” の例文
旧字:總崩
揚句あげくはて踏張ふんばりせんが一度にどっと抜けて、堪忍かんにんの陣立が総崩そうくずれとなった。その晩にとうとう生家を飛び出してしまったのである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この猛烈なる悪態あくたいで浮足立った人が総崩そうくずれになって、奔流ほんりゅうの如く逃げ走る。兵馬に槍を貸すことを謝絶ことわった役人連中までが逃げかかる。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
洪水こうずいのようにあふれて来たこの勢いを今は何者もはばみ止めることができない。武家の時が過ぎて、一切の封建的なものが総崩そうくずれに崩れて行くような時がそれにかわって来た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ますますはげしくかけましたから、さすがに乱暴らんぼうあらえびすも総崩そうくずれになって、かなしいこえをあげながらしました。味方みかたはそのをはずさず、どこまでもっかけて行きました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
不意をくらった人群ひとごみ総崩そうくずれに浮き足だって散らかっていった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)