しも)” の例文
「この藪医者。貴様のお蔭で俺は死損しにそこのうたぞ。地獄か極楽へ行くつもりで、香奠を皆飲んでしもうた人間が、この世に生き返ったらドウすればええのじゃ」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
別段悩める容態ようすもなく平日ふだんのごとく振舞えば、お浪はあきれかつ案ずるに、のっそり少しも頓着とんじゃくせず朝食あさめししもうて立ち上り、いきなり衣物を脱ぎ捨てて股引ももひき腹掛け着けにかかるを
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もう絵になってしもうて御座るけんどなあ老先生。あなた方御夫婦はこの村の生命いのちの親様じゃった。四十年この村に御奉公しとる私がよう知っとる。御恩は忘れまっせんぞえ。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わしが無理借りに此方こちへ借りて来て、七ツさがりの雨と五十からの芸事、とても上りかぬるとそしらるるをかまわず、しきりに吹習うているうちに、人の居らぬ他所よそへ持って出ての帰るさに取落してしもうた
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)