素人家しもたや)” の例文
素人家しもたやの夫帰にいい加減なことをいって二階へ上り、畳をめくって五人坊主を見ると、呪いの灸痕はちょうど臍のところまでいっていて、あとひと焼
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「そうだ、素人家しもたやなら泊めてくれましょう。ひとつあそこへ頼んでみますから、待っていておくんなさい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、店屋にかこまれて、裕福らしい素人家しもたやが数軒かたまっている、そのなかのひとつだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
此方こっちよ。」と道子はすぐ右手の横道に曲り、表の戸を閉めている素人家しもたやの間にはさまって、軒先に旅館のあかりを出した二階建の家の格子戸を明け、一歩先へ這入って「今晩は。」と中へ知らせた。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
堀長門から素袍すおう橋、采女の馬場へかかったかと思うと、西尾隠岐おき中屋敷へ近い木挽町三丁目のある路地口の素人家しもたや、これへお糸がはいるのを見届けてからさり気なく前を通ると、お糸の声で
此方こつちよ。」と道子みちこはすぐ右手みぎて横道よこみちまがり、おもてめてゐる素人家しもたやあひだにはさまつて、軒先のきさき旅館りよくわんあかりした二階建かいだてうち格子戸かうしどけ、一歩ひとあしさき這入はいつて「今晩こんばんは。」となからせた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
宗因饅頭まんじゆうの店からそう遠くもない、しかも静かな小路の素人家しもたや
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
素人家しもたや並みに小店が混っているとはいうものの、右に水野や林播磨はりま邸町やしきまちが続いているので、宵の口とは言いながら、明るいうちにも妙に白けた静けさが、そこらあたりを不気味に押し包んでいた。