こっそ)” の例文
旧字:
「考えていても仕方がない。味方を知り敵を知るは必勝の法と兵学にもある。これからこっそり出かけて行き、水狐部落の様子を見よう」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二人はこっそり囁き合い、裏口の雨戸をこじ開けた。二人ながら名誉の盗賊、こういう事はお手の物である。音もなくスーと雨戸が開いた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しばらく館への出仕も止め家にばかりこもっていた。そうして時々例の紅巾を、こっそり取り出して眺めてはわずかに心を慰めていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お目見得以下でも以上でも殿に尽くす道は皆一つだ。これからも充分心を配って裏切り者の動静をこっそり探ってもらいたいものだ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女はこっそり訴え出た。「娘を誘拐かどわかした同じ一座が、今度は息子をたぶらかそうとします。どうぞお取締まり下さいますように」と。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……そのうち故郷が懐しくなり、こっそり二人で帰って行った。そうしてそこで俺達は聞いた、北条内記が国を遁がれ、女敵討めがたきうちに出立したと!
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
併し此時、積荷と一緒に多量の煙硝や弾丸や、刀槍の類をこっそりと、船内へ運搬された事は、支店の人さえ気が付かなかった。
赤格子九郎右衛門 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「これをお前に遣ることにする。大事にしまっておくがいい。そうして俺が死んだ後で、こっそりひらいて見るがいい。お前を幸福しあわせにしようからな」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そうして本物はこっそりと、自分が隠して置いた事、義哉へ箱を預けたのが、日本橋の大老舗おおしにせ、伊丹屋の娘だということなどを、細々こまごまと説明したのであった。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「泥棒と疑われても仕方がねえ。こんな夜中やちゅう弁解ことわりもせず、こんなきたな身装みなりをして他人ひとうちこっそり忍び込んだんだからな……早く縛るがいい何を為ているんだろう?」
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この私がもしも畜生なら彼奴きゃつは泥棒というものじゃ! 泥棒と云えばあの野郎め、俺にかれたその夜から裏手の石垣を掻き登り、お前のへやこっそりと忍んで行くということだが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
っと応接間を抜け出して、密告者の手紙を手頼たよりにして、こっそり二階へ行って見ました。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その晩遅くなってから、ガブリエルはこっそり室を出て老人の室へ這入って行った。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
名聞みょうもん嫌いの道人様、お城をご出立なさるにも、いずれこっそり人知れず、朝か夜分かそんな時刻に、お出ましになるに相違ないと、それで裏門へは妾の父が、そうして表門へは山影様が……」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その夜ひそかに旅装を調え、誰にも告げずこっそりと発足したのであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
日没ひぐれを待って葉之助はこっそり城を抜け出した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)