あば)” の例文
死にもしかねない有様に、当時、草茫々ぼうぼうとした、あばを生麦に見つけだして、そこに連れて来てあげて、やっと心持ちを柔らげさせたのではなかったか。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
浪花なにはの町はづれ、俳諧師鬼貫のわび住居。軒かたむき縁朽ちたるあばら家にて、上の方には雪にたわみたる竹藪あり。下の方の入口には低き竹垣、小さき枝折戸あり。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
処が丁度この玉が七つになつた年の春の事で御座いました、何処どこから飛んで来たものか一匹のかひこの蛾が這入はひつて来ましてあばの隅の柱にとまつて卵を沢山に生み付けてきました。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
池の茶屋というのは、この冷い水のほとりに建てられたるただ一軒のあばら家である。入口の腰障子を開けて入ると、すぐ大きな囲炉裡がある。囲炉裡の中には電信柱ほどもある太い薪木がくすぶっている。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)