知慧ちえ)” の例文
とんでもねえ、あれはお前様、芋※ずいきの葉が、と言おうとしたが、待ちろ、芸もねえ、村方の内証を饒舌しゃべって、恥くは知慧ちえでねえと
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いわんや我我の知ったことを行に移すのは困難である。「知慧ちえと運命」を書いたメエテルリンクも知慧や運命を知らなかった。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私たちはもう知慧ちえの実を喰べたのである。昔の人のように無心でいるわけにゆかない。また時代も認識の時期に達した。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ソシテ、真珠ノ玉ト耳朶トガ互イニ効果ヲ助ケ合ッテイルノデアルガ、アノ耳ニアノ真珠ヲ下ゲルヿヲ考エツイタノハ彼女自身ノ知慧ちえデハアルマイ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
無策ということは結局知慧ちえなしを意味するものか。ただ誠意ばかりでは人の心を打たないものなのか。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
想像力を待って、始めて、まったき人性にもとらざる好処置が、知慧ちえ分別の純作用以外にきてくる場合があろうなどとは法科の教室で、どの先生からも聞いた事がない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夢としか思われなかった海の神の美しい乙女おとめ、それを母とする霊なる童児、如意にょい宝珠ほうじゅ知慧ちえの言葉というような数々の贈り物なども、ただ卒然そつぜんとして人間の空想に生まれたものではなくて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「どういうことから自分が生まれるようになったのか、何の宿命でこんな煩悶はんもんを負って自分は人となったのか、善巧ぜんぎょう太子はみずから釈迦しゃかの子であることを悟ったというが、そうした知慧ちえがほしい」
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ただ少し知慧ちえと剛情という意地の不足が気にかかる。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
神と真理の知慧ちえであり
メンデレーエフ (新字新仮名) / 石原純(著)
人形の締めているだらりの帯には、大方兄のキリレンコにでも知慧ちえを借りたのであろう。黒地にペインテックスで桂馬けいま飛車ひしゃの将棋のこまが描いてあるのであった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そうして多くの知慧ちえと経験とから成る伝統が連綿として打ちつづいて居ります。支那の民藝は、一日にして出来たものではありません。また一個人の考案になるものでもありません。
北支の民芸(放送講演) (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
して見ればおれの知慧ちえの光も、五欲のために曇ったと云え、消えはしなかったと云わねばなるまい。——が、それはともかくも、おれはこの島へ渡った当座、毎日忌々いまいましい思いをしていた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一人の知慧ちえは民族の知慧にかない。唯もう少し簡潔であれば、……
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)