相識しりあい)” の例文
この下宿さがし——小野さんと私たちが相識しりあいになったのは、その「下宿探し」という楽しい企業に関する一つの妙ないきさつからだった。
そして、近くの九老僧くろうそうのそばに住んでいる、庄之助しょうのすけさんという相識しりあいの百姓を教えてくれて、そこへ寄ってゆっくり休むようにと、添書までつけてくれた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
榊なら、それから忘れずにいるふる相識しりあいの間柄である。唯、正太と一緒に来たのが、不思議に三吉には思えた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ドイツの密偵部の人には、かなり相識しりあいもございますけれど、良人おっとは英国士官でしたし、いまあたくしのお友達の大部分は、連合軍の主要な地位の方々でございます。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
深川の顔役で香具師やしのほうもやっている木場の甚てえ親分とな、ちょっくらほかのかかり合いで相識しりあいになったのだが、このひとがいってすすめてくださるのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
岡見を通し、書いたものを通し、既に相識しりあいの間柄のような市川は極く打解けた調子で捨吉を迎えてくれた。この人は捨吉の周囲にある友達の誰よりも若かった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
心当りと言っても、別に子供の立ち寄るような相識しりあいもない一本道である。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
私は経師屋きょうじやの恒さんと相識しりあいになったが、恒さんの祖父なる人がまだ生きていて、湘南しょうなんのある町の寺に間借りの楽隠居をしていると知ったので、だんだん聞いてみると
自分の生れるまえから相識しりあいのような、なつかしいものに思われる顔だった。痩形の若い男だった。
あの顔 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「神田の伯母んとこでの相識しりあいだから親分も彦も知るめえが、今そこでその小太郎に遭ったんだ。」
とお多喜は、まるで相識しりあいの人に話しかけるような心易こころやすい言葉で、八幡様に向い、なおも口の中で
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「人聞きが悪いじゃあありませんか。何かわたしに、まともに来られない男の相識しりあいでもあるようで——誰でしょう、用があったら、自分で来たらいいじゃないの、ねえ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大岡様を通じてだいぶ前から相識しりあいになっているこの蒲生泰軒を、愚楽は、学問なら、腹なら、まず当今第一の大人物とみて、こころの底から泰軒に絶大な尊敬を払っているんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
降って沸いたような血戦に家族は近くの相識しりあいの家に避難して、いつの間にか、気のきいた者が襖障子を取り払い、縁に近い庭に仲間がかがり火をいて、屋内にも燭台を立てならべ
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「だが——」と声を落として、「なんじの相識しりあい……意外に近い者から出おったのだ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ただへらへら平兵衛の相識しりあい按摩あんまの夫婦がどこからかもらって来て育てていたのが、去年女房に死なれて盲目めくらひとりで困っているのを、平兵衛が勝手に引き取ってきただけのことなのだから面白い。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
女房とも談合して、幸いやぐら下のまつ川というのが講中や何かで相識しりあいだからお艶さんをこっちの娘分にして当分まつ川へ置いてもらったらどうだろう? 決して枕はかせがないという一枚証文なら
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「さよう、津賀閑山——お相識しりあいかな?」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さては閑山の相識しりあいらしい。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)