直弼なおすけ)” の例文
桜田門外に邸を持つ彦根城主井伊直弼なおすけは、安政五年四月二十二日、このような将軍の下に大老となった。井伊の擅政だんせいは、これを出発点とする。
『七面鳥』と『忘れ褌』 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
安政六年十月七日の朝、掃部頭かもんのかみ井伊直弼なおすけは例になく早く登城をして、八時には既に御用部屋へ出ていた。今年になって初めての寒い朝であった。
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれども先には外国人のために五港を開港し、その開国の勇者井伊いい直弼なおすけ〕大老は桜田門外に殺されてしまう。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
この直弼なおすけという人は『作夢記事』などという本は「井伊掃部頭殿は無識にして強暴の人なり」とだいぶこっぴどくこきおろしているが、強暴というのはいってみれば闘志熾烈しれつの別名で
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
徳川中興ちゅうこうの主、八代将軍吉宗よしむね、徳川最後の将軍慶喜よしのぶ、水戸烈公、徳川時代第一の賢相けんしょう松平定信、林家中興ちゅうこうの林たいら、上杉鷹山ようざん公、細川銀台公の如き、近くは井伊直弼なおすけの如き、みな養子たらざるはなし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あの旧幕府の大老井伊直弼なおすけの遺風を慕う彦根藩士までがこの東征軍に参加し、伏見鳥羽の戦いに会津あいづ方を助けた大垣藩ですら薩州方と一緒になって、先鋒としてこの街道を下って来るといううわさだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……去年、詰り万延まんえん元年三月、江戸幕府の大老井伊直弼なおすけが桜田門外に斬られてから、ながいあいだ鬱勃うつぼつとしていた新しい時代の勢が、押えようのない力でちあがって来た。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こういう時であります。ここに於て幕府は進退きわまって、その当時の名高い井伊掃部頭いいかもんのかみ直弼なおすけ〕を大老にして、しかして京都に有名なる大獄を起して、近来の言葉で言えば「クーデター」をやった。