盂蘭盆会うらぼんえ)” の例文
観世音かんぜおん四萬三千日、草市、盂蘭盆会うらぼんえ瞬間またたくまに過ぎ土用の丑の日にも近くなった。毎日空はカラリと晴れ、市中はむらむらと蒸し暑い。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ちょうど上元じょうげんの日であった。水月寺の尼僧達が盂蘭盆会うらぼんえを行ったので、その日はそれに参詣さんけいする女が四方から集まって来た。
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
盂蘭盆会うらぼんえの名残りの提灯や、お供え物が、方々の墓に、いくつも残っている。「玉井家累代之墓」と彫られた、花崗岩みかげいしの墓標の前に立った。合掌した。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
牢営長官の愛児が、盂蘭盆会うらぼんえの夜、地蔵寺の池で溺れ死んだ。そして傅役もりの朱同が当夜からいなくなったという、それの詮議せんぎや家ごとの町調べだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌十三日は盂蘭盆会うらぼんえで、親戚のものが墓参に来る日である。九郎右衛門は住持に、自分達の来たのを知らせてくれるなと口止をして、自分と文吉とは庫裡くりに隠れていた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのうちに七月が来て、盂蘭盆会うらぼんえの前夜となったので、詹の家では燈籠をかけて紙銭しせんを供えた。紙銭は紙をきって銭の形を作ったもので、亡者の冥福を祈るがためにいて祭るのである。
自分は、この盂蘭盆会うらぼんえに水辺の家々にともされた切角灯籠きりこどうろうの火がしきみのにおいにみちたたそがれの川へ静かな影を落すのを見た人々はたやすくこの自分のことばに首肯することができるだろうと思う。
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
盂蘭盆会うらぼんえ遠きゆかりとふし拝む
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
盂蘭盆会うらぼんえ └端午
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
大牢の城門外にある獄神びょうと地蔵寺では、例年盂蘭盆会うらぼんえの当夜、さかんなる燈籠流しの魂祭たままつりがおこなわれる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
草深い山峡の部落では、盂蘭盆会うらぼんえは、若い男女が思いきり羽をのばす唯一の祭である。盆踊りは、柿ノ坂という、養蚕のさかんなことで有名な部落の仲蔵寺ちゅうぞうじで行われる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
のみか、いつのまにやら日はたそがれ、盂蘭盆会うらぼんえ熱鬧ねっとうのちまたも遠く夕闇の楊柳原やなぎはらまで来てしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どの舟にも、ふなべりに竹の櫓が組まれてあって、それに、ずらりと美しい燈籠提灯が吊られる。盂蘭盆会うらぼんえのための提灯なので、どれにも、戒名が書いてあり、紋章が入っている。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
七月の盂蘭盆会うらぼんえをすぎるとすぐ聞えてきた。小牧山から尾張の各郡への飛札の使いが頻々ひんぴんと飛ぶ。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)