白羽二重しろはぶたえ)” の例文
と風呂敷をひらきまして、中から取出したは白羽二重しろはぶたえ一匹に金子が十両と云っては、其の頃では大した進物で、これを大藏の前へ差出しました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
くび白羽二重しろはぶたえを捲きつけて、折り鞄を提げ、爪皮つまかわのかかった日和下駄ひよりげたをはいて、たまには下宿へもやって来るのを、お庄もちょいちょい見かけた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
するとその時、私の着座している前の畳へ、夢のように白羽二重しろはぶたえの足袋が現れました。続いてほのかな波の空に松と鶴とが霞んでいる裾模様が見えました。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
程もなく三越みつこしから大きな箱が届きました。「何だろう」と思って開けましたら、燃立つような緋縮緬ひぢりめん白羽二重しろはぶたえの裏、綿わたをふくらかに入れた袖無しです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
襖の蔭から半身が見える、白羽二重しろはぶたえ紗綾形しゃあやがた、下には色めいた着流し。お絹は莞爾にっことしてこっちを見ながら
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんなら羽織の胴裏どううらにでも描いてもらいましょうと、楢屋の主人は早速白羽二重しろはぶたえを取寄せて頼んだ。
彼にはその歌の節廻しと、白羽二重しろはぶたえ手甲てっこうに同じ脚絆きゃはん穿いて、上りがまちで番頭に草履のひもを結んで貰っていたお久の今朝のいでたちとが、かわるがわる心に浮かんだ。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鳩尾みずおちめた白羽二重しろはぶたえの腹巻の中へ、生々なまなまとした、長いのが一ぴき、蛇ですよ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
色白——と言ったって、あんな底光りのする色白は滅多にありませんよ、白羽二重しろはぶたえ紅絹もみを包んで銀の粉をまぶしたような色だ、眉がボーッと霞んで、眼が大きくて、妙に素気ない癖に情愛を
裏に白羽二重しろはぶたえのきれを縫いつけて、それへ各々めい/\の朱印を附けて有るのですが、たれのだか分りません
白羽二重しろはぶたえ産衣うぶぎに包んで、生れたばかりの赤ん坊を抱いて来ましたが、赤ん坊に付いていたお金は少しばかりではなかった様子で、あちこちの借りなど返したのを、私は子供心に覚えております