白粉刷毛おしろいばけ)” の例文
その小さい引出しが開けられたままになっていたり、白粉刷毛おしろいばけが側に転がっていた。その時女の廊下をくる音をきいた。彼は襖をしめた。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
おせんはもう一白粉刷毛おしろいばけった。と、つぎからきこえてたのは、妻女さいじょのおむらのこえだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
... そのせゐで自然収入みいりがあるやうにと思つて見物にびる事になります。」と言つて、白粉刷毛おしろいばけで鼻先をぞんざいに塗りたくつた。「好きな茶器も、つい買ひ度くなりますね。」
まだ顔を見せないで、打向った青行燈の抽斗ひきだしを抜くと、そこに小道具の支度があった……白粉刷毛おしろいばけの、夢の覚際さめぎわ合歓ねむの花、ほんのりとあるのを取って、なまめかしく化粧をし出す。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白粉刷毛おしろいばけでくるくる顔をなでまわしていた曙山さんは、傍らにいるおもよどんや、お金ちゃんをあごでつかって、べにをとれの、墨をかせのと、命令するようにおしつぶした声で簡単にいいつける。
白粉刷毛おしろいばけったおせんのは、名匠めいしょう毛描けがきでもするように、そのうえ丹念たんねんになぞってった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)