白帷子しろかたびら)” の例文
石川県江沼郡橋立村では死者に最も親等の近い婦人が、白帷子しろかたびらを被つて号泣しつつ葬列に従うがこれを帷子被りと云うている。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
その煙のなかに白帷子しろかたびらを着た藤枝外記の姿があらわれるのは、二十余年前に自分が観た中村座の舞台の姿をそのままに借りて来たのであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と、白帷子しろかたびらを着て、えりに大きな数珠ずずを懸けている無法者の老人が、前へ進んで名乗った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日出仕を終ってから、修理は、白帷子しろかたびら長上下ながかみしものままで、西丸の佐渡守を訪れた。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蔵人は乗りかかって止めを刺すと、脇差の血も拭って鞘におさめ、それを床の間に置き、さっきのとおりに、風呂場へ行って手水ちょうずをつかい、白帷子しろかたびら麻裃あさかみしもを着て、ぶらりと玄関へ行った。
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
砂礫すなつぶていて、地を一陣のき風がびゅうと、吹添うと、すっと抜けて、軒をななめに、大屋根の上へ、あれあれ、もの干を離れて、白帷子しろかたびらすそを空に、幽霊の姿は、煙筒えんとつの煙が懐手をしたように
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何ものこらず、具足一領、やり一本、白帷子しろかたびらひとつ、挾箱はさみばこに入れて下り申しそうろう