“痛(や)” の例文
と、ちと痛(や)める容子(ようす)を見せた。それに対し秀吉が、どこかへ入湯でもしては——とすすめると、彼は、ほろ苦い笑みを口辺にゆがめた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本来なれば何も彼もすてて、茅野雄の後を尾行て行くか、でなかったら後腹(あとばら)の痛(や)めぬように——競争相手を滅ぼす意味で——討って取るのが本当であった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
長い間の無理な仕事で、小作の板のようになった腰が、今度はズキズキと痛(や)んだ。母親は由三に銭(ぜんこ)をくれると云っては、嫌がる由三をだまして腰をもませた。——夜は静かだった。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
倒れるときお庭石にでも打ちつけたものか、脳天がずきりずきりと痛(や)んでおります。わたくしはその谷間をようよう這(は)い上りますと、ああ今おもい出しても総身(そうみ)が粟(あわ)だつことでございます。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
呪(のろ)われた二ヵ所の太刀傷ズキズキと痛(や)みだすもののごとく、青白い皮膚にはこらえる汗が膏(あぶら)となって滲(にじ)みでる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倒れるときお庭石にでも打ちつけたものか、脳天がづきりづきりと痛(や)んでをります。わたくしはその谷間をやうやう這(は)ひ上りますと、ああ今おもひ出しても総身(そうみ)が粟(あわ)だつことでございます。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
「足が痛(や)めるでしょうけれど、里へ行けば駕があるから急がずに歩きましょうよ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「身は地下に埋もれても、魂魄(こんぱく)はなお奉公するといって死んだほどの重治じゃ。その重治が生前から気に痛(や)んでいたこととあるのに、どうしてこの秀吉とて反(そむ)けよう。心のままにしたがいい」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)