狼群ろうぐん)” の例文
狼群ろうぐん鉄砲てっぽうをおそれて日中はあまりでないし、また人間の姿すがたが見えると、さっさとげてしまうので、この日は別段べつだん危険きけんもなかった。
目のくらむような陽をあびて、狼群ろうぐんのように、はいかがんだ人数、向こうに見えるつぎ間道かんどうを目がけてゾロゾロゾロゾロはいこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倫敦ロンドンに住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり。余は英国紳士の間にあつて狼群ろうぐんする一匹のむく犬の如く、あはれなる生活を営みたり。倫敦の人口は五百万と聞く。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひるが数時間後の暴風を予知して水底に沈み、蜘蛛くもが巣を張って明日あすの好天気を知らせ、象が月の色を見て狼群ろうぐんの大襲来を察し、星を仰いだかわうそが上流から来る大洪水を恐れて丘に登る。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
足跡からはんずると、ロボは狼群ろうぐんの先に立ってわなへ近よると、仲間なかまを止めて、自分ひとりでうまい工合ぐあいにかきだしてしまうらしい。
きびすをかえして七、八歩、うしろを見るといつのまにか、そこにも狼群ろうぐんのような原士はらしが、兇刃を植えならべて、じわじわと、静から動へ移らんとする空気をみなぎらしている。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このロボというのは、灰色はいいろの大きなおおかみで、カランポー狼群ろうぐんの王といわれるだけにとても知恵ちえがはたらき、毒薬にもわなにもかからない。
たちまち、合図の角笛が鳴ると、四方に隠れていた土蛮が、董荼奴を殺し、阿会喃を取りかこみ、二つの首を取ると、死骸は谷間へ蹴落して、わあと、狼群ろうぐんのように本陣へ帰ってきた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣の光は閃々せんせんと乱れて見えたが、その時、ここ、もちの木坂の一地点——ほとんど、人と人と人と人とのかたまりが、一個の野晒のざらしをあばき合う狼群ろうぐんのごとく眺められて、さしも、法月弦之丞
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)