牡鶏おんどり)” の例文
旧字:牡鷄
コメット・ヌマタは夜の空間、花火吹散らして空高く、飛行ズボン脱いで牡鶏おんどりの真似をしている。ひどく古加乙涅コカインの酔が利いた夜であった。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
牡鶏おんどりに護られるのが当然として蹴合いの傍でも余念なく餌を啄んでいる牝鶏のような澄ました態度を見せております。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
教会堂の鐘楼に鶏形風見があるように、T男爵夫人の客間も二つの勇ましい牡鶏おんどりを持っていた。一つはジルノルマン氏で、一つはラモト・ヴァロア伯爵であった。
田舎のうす暗い野原ばかりを過ぎて、三日間のみ疲れた旅行ののち、わたしが預かることになっている、牡鶏おんどりの飾りのついている教会の尖塔が樹樹きぎの間から見えました。
快活な同じ鐘の音は、ふもとの町からも聞こえて来た、牡鶏おんどりが村から村に時鳴ときき交すように。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
庭では牡鶏おんどりが一羽、小首をかしげて物珍しそうに、米友の挙動をながめているだけです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
相手の男はあたかも怒った牡鶏おんどりのように憤然とした様子をして言った。
茶の赤い牡鶏おんどりが一羽戸口から這入って来た。閑かなその呼びごえ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それ等のなかを、監督は鶏冠とさかを立てた牡鶏おんどりのように見廻った。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
牡鶏おんどりした。(大正十四年五月〜十二月、婦人画報)
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
喋々喃々ちょうちょうなんなんし、美しく着飾り、鳩のようになり、牡鶏おんどりのようになり、朝から晩まで恋愛をつっつき回し、かわいい妻のうちに自分の姿を映してみ、得意になり、意気揚々として、りくり返ることだ。