牛乳屋ちちや)” の例文
台所から出入りの牛乳屋ちちやの小僧が附ぶみをした事のあるのを、最も古くから、お誓を贔屓ひいきの年配者、あたまのきれいにげた粋人が知っている。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別荘と畑一つ隔たりて牛乳屋ちちやあり、かしの木に取り囲まれし二棟ふたむねは右なるに牛七匹住み、左なるに人五人住みつ、夫婦に小供こども二人ふたり一人ひとり雇男おとこ配達人はいたつなり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
牛乳屋ちちやの表に遊んでた
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
加茂川の邸へはじめての客と見える、くだんの五ツ紋の青年わかものは、立停たちどまって前後あとさきみまわして猶予ためらっていたのであるが、今牛乳屋ちちやに教えられたので振向いて
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれはたなごころもて顔をおおい、ひじを机に立てつ、目の前には牛乳屋ちちや、水車場、小川流るるちまた、林の奥、の葉浮かびて流るるまっすぐの水道、美しき優しき治子、おきなわらべ
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
牛乳屋ちちやが露地へ入れば驚き、酒屋の小僧が「今日こんちは」を叫べば逃げ、大工が来たと見ればすくみ、屋根屋が来ればひそみ、畳屋たたみやが来ても寄りつかない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
否、君のみにあらず、われは一目見しかの旗亭きていの娘の君によくたると、老い先なき水車場のおきなとまた牛乳屋ちちやわらべと問わず、みなわれに永久とこしえの別れあるものぞとは思い忍ぶあたわず。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)