かけら)” の例文
兎も角もと私は其処に腰を下した。足の裏がちくちくと痛んでゐる。雲のかけらは次第に消えて白い月影のみいよ/\寂しい。
岬の端 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
が、僅に残つてゐる良心どころか良心らしいものは、かけらさへ残つてゐない。女らしい、つゝましい心の代りに、そこに翼を拡げてゐるものは、恐ろしい吸血鬼ヴァンパイヤである。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
自分たちの集めた草や花や虫や石のかけらなどを、自分ので見るより二百倍も三百倍も大きくして見せる顕微鏡で見ることなどを思ふと、叢の中で踊りまはりたいほどでした。
原つぱの子供会 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
私が自動人形だとお思ひになりますか?——感情のない機械だと? そして私のパンのかけらが唇からつかみ取られ、私の生命の水がさかづきからこぼれ出てしまふのに堪へ得るとお思ひですか。
蟹の甲殻のかけらを時々ふむらしく、その音がした。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
右のてのひらに二箇所硝子のかけらが立っていた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
石に碎けしかけらなり
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
が、僅に残っている良心どころか良心らしいものは、かけらさえ残っていない。女らしい、つゝましい心の代りに、そこに翼をひろげているものは、恐ろしい吸血鬼ヴァンパイヤである。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)