片町かたまち)” の例文
「是からさきは図書館でなくつちや物足りない」と云つて片町かたまちの方へがつて仕舞つた。此一言で三四郎は始めて図書館に這入る事を知つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
蔵前くらまえの八幡町、森田町、片町かたまち須賀町すがちょう(その頃は天王寺ともいった)、茅町かやちょう、代地、左衛門河岸さえもんがし(左衛門河岸の右を石切いしきり河岸という。名人是真ぜしん翁の住居があった)
何ぞ手許使てもとづかい勝手許かってもとを働く者がなければなりませんから、方々へ周旋を頼んで置きますと、渡邊織江の家来船上忠助ふながみちゅうすけという者の妹おきくというて、もと駒込こまごめ片町かたまちに居り
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「確かにはわからねえが、その平公は何でも本郷片町かたまち辺の屋敷にいる奴だそうで……」
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
寒さがきびしくなり、朝な朝な霜のおりる頃に、おせんは仕事を届けにゆく道で思いがけない人に会った。天王町てんのうちょうから片町かたまちへはいるところに小さな橋がある。そこまで来ると横から名を呼ばれた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「私一寸片町かたまちまでまいりたいのでございますが」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
世話しければ嘉傳次は此感應院の食客とぞ成り感應院或時嘉傳次にむかひ申けるは和歌山の城下に片町かたまちといふあり其處に夫婦に娘一人あり親子三人暮さんにんぐらしの醫師なりしが近頃兩親共に熱病ねつびやうにて死去し娘ばかりぞのこれり貴公きこう其所へ養子に行て手習てならひ指南しなんでもせばよろしからんといふ嘉傳次是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「これからさきは図書館でなくっちゃもの足りない」と言って片町かたまちの方へ曲がってしまった。この一言で三四郎ははじめて図書館にはいることを知った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)