はしや)” の例文
雀部ははしやぎ出した。『私が女に生れて、矢沢さんと手を取つて歩けばかつたなあ。ねえ、矢沢さん。さうしたら——』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
すると、ちやうど、はしやぎ機嫌でゐたダイアナが(彼女はジョンの意志には容易に支配されなかつた、何故なら彼女の意志もまたをとらず強かつたから)
キヤツキヤツはしやいでゐた芳ちやんは間もなく長火鉢の傍に寢床をのべて寢てしまつた。暑中休暇のことで階上も階下もがら空きで四邊はしんと鎭まつてゐた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「あれあはしやぎ出すと、なか/\利巧で面白いやつなんだが、普段はどうも陰気で困るよ」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
しかし客によつては、色気ぬきに女を面白く遊ばせて、陽気に飲んで騒いで引揚げて行く遊び上手もあつて、そんな座敷では彼女も自然に心がはしやいで、えた気分が生き生きして来た。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
之を見ると、ミハイロは急にはしやして、えへら/\笑つたり、遠方だから声は届かなかつたが、其方を向いて何か大声にわめいたり、帽子をつたりする……ブレーキの処に居た車掌が尖り声で
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
美しい娘二人の間に、八五郎のはしやぎ振りは思ひやられます。
もはや敵艦を沈めてしまつたやうなはしやぎやうだ。
怪艦ウルフ号 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
はしやぎくるめくやすものの
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
今日もはしやいで
沙上の夢 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
酒となると談話が急にはしやぐ、其処にも此処にも笑声が起つた、五人の芸妓の十の袂が、銚子と共に急がしく動いて、なまめいた白粉の香が、四角に立てた膝をくづさせる。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私の從姉いとこ達は嬉しさで一ぱいになつて、セント・ジョンの無口を壓倒する程、雄辯に話したり論じたりした。彼は、妹達に會つて心から嬉しかつたが、二人がはしやいで騷ぎまはるのは氣に入らなかつた。