煌々きらきら)” の例文
横に落した紫の傘には、あの紫苑しおんに来る、黄金色こがねいろの昆虫のつばさの如き、煌々きらきらした日の光が射込いこんで、草に輝くばかりに見える。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山気にいくらかぼかされながらも月はいよいよえ返り、月の真下の木曽川の水は一所ひとところ蛇の鱗のように煌々きらきらと銀色に輝いた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ごく小さな金の盒であったが、これにも何か宝石いしちりばめてあると見えて、煌々きらきらと輝いていた。「右がマハラージャです」
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
庸三は息詰りを感じて、やがて匆々そうそうに外へ出た。葉子も清川とふざけている瑠美子を促して、続いたが、星の煌々きらきらする夜空の下へ出ると、やっと彼女もほっとした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
不意に橋の上に味方の騎兵があらわれた。藍色の軍服や、赤い筋や、鎗の穂先が煌々きらきらと、一隊すぐって五十騎ばかり。隊前には黒髯くろひげいからした一士官が逸物いちもつまたがって進み行く。
長靴を穿いて厚い外套がいとうを着て平気で通勤していたが、最初の日曜日は空青々と晴れ、日が煌々きらきらと輝やいて、そよ吹く風もなく、小春日和こはるびよりが又立返たちもどったようなので、真蔵とお清は留守居番
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
煌々きらきらと光る露のダイヤモンドが、方々でかすかな音を立ててしきりにしたたっていた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
あの美しい星になって毎晩煌々きらきらと下界を俯瞰みおろしながら地上に残してきた人の幸福しあわせを祈っているという言い伝えをお覚えになっていらっしゃいましょうか、とこう聞くのです。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)