烏丸からすまる)” の例文
けれど彼は、何をして遊んでもそれにおぼれない自己をいつも持っていた。相国寺そうこくじへ三条、烏丸からすまる飛鳥井あすかいの諸卿を招いて、蹴鞠けまりを催したときである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その年ごろのならいで「お黒どの」とか「烏丸からすまる」とかかげで色いろ綽名あだなを呼んだ、はじめはそんなことも気にならなかったが、或るときふと哀れになり
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
七条しちでうの停車場も今より小さかつたし、烏丸からすまるとほりだの四条しでうとほりだのがずつと今よりせまかつた。
一番気乗のする時 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
描いたその下に烏丸からすまる枇杷葉湯と書いた一対の細長い箱を振り分けに肩にかついで「ホンケー、カラスマル、ビワヨーオートー」と終わりの「ヨートー」を長く清らかに引いて
物売りの声 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
弟には忠利が三斎さんさいの三男に生まれたので、四男中務なかつかさ大輔たゆう立孝たつたか、五男刑部ぎょうぶ興孝おきたか、六男長岡式部寄之よりゆきの三人がある。いもとには稲葉一通かずみちに嫁した多羅姫たらひめ烏丸からすまる中納言ちゅうなごん光賢みつかたに嫁した万姫まんひめがある。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
八条烏丸からすまるにある美福門院を法皇の御所とした。
「頼みというのは、おことたちが、京都へ行った折に、これを堀川の烏丸からすまる光広きょうのお手許まで届けてほしいのじゃが」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三等出仕の烏丸からすまる一郎とふたりで、昨日から敵のなかへ深く這入って行ったが、烏丸が薩軍の哨兵しょうへいに発見されて追われたため、彼はひとりとなってからくも復命に帰って来たのであった。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)