炬燵ごたつ)” の例文
るもつもるも風情ふぜいかな、未開紅みかいこううめ姿すがたつぼみゆきはらはむと、おき炬燵ごたつより素足すあしにして、化粧けはひたる柴垣しばがきに、には下駄げたつまさばく。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今も、ぽつねんと、彼は箪笥たんすかんに倚りかかっていた。炬燵ごたつをした膝の上には、五ツくらいな女の子が、無邪気な顔して眠っている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お藤が入れていった置き炬燵ごたつに暖をとって、長ながと蒲団にはらばった左膳、ひとりこうしていると、ゆくりなくもさまざまのことが思い出されるのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
朝飯あさめし昼飯ひるめしをすませた後、僕は書斎の炬燵ごたつへはいり、二三種の新聞を読みはじめた。新聞の記事は諸会社のボオナスや羽子板の売れ行きで持ち切っていた。
年末の一日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十一月に入ると間もなく、私は今までにない寒さを感じ始めたので、高価たかい工賃を払って昼間線ちゅうかんせんを取って、上等の電気炬燵ごたつを一個、敷き放しの寝床の中に入れた。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
銭形の平次は置き炬燵ごたつに尻を突込んで黄表紙を拾い読みしていたのです。