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滾
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たぎ
ふりがな文庫
“
滾
(
たぎ
)” の例文
どうもいかぬ、唯ちらちらする蘭引の
滾
(
たぎ
)
る音につれて、
火蛇
(
ひへび
)
の精の
嘲笑
(
せゝらわらひ
)
が聞えるばかり。彼はわが冥想を亂さうとして戯弄するのか。
錬金道士
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
炭は真白な灰になり、昼間には
滾
(
たぎ
)
り立つて
呻
(
うな
)
りつづけて居た鉄瓶は、それのなかの水と一緒に冷えきつて居た。それも当然の事である。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
電話のベルが廊下のあなたに三度四度と鳴らされて行きました。「
坩堝
(
るつぼ
)
に
滾
(
たぎ
)
りだした」不図こんな言葉が何とはなしに
脳裡
(
のうり
)
に
浮
(
うか
)
びました。
壊れたバリコン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
がむしゃらな、一途の激情が
滾
(
たぎ
)
り立って来て、抑えようがない。息切れがして、すぐ傍の椅子の中へ落ち込んでしまった。
墓地展望亭
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「どうしてもわかりませんですなあ! 旦那様! じゃ、お風呂におはいり下さいまし。よく
滾
(
たぎ
)
っておりますから」
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
此奴が崩れた日には、この
煮
(
に
)
え
滾
(
たぎ
)
った牛鍋が何時僕達の頭の上で宙返りをするかも知れない。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
サマーデンの村の近くで、枝分れする二条の、左から
滾
(
たぎ
)
り落ちるのは、今日私が沿うて旅したベルニナの渓で、その辺では、フラッツバッハ Flazbach と呼ばれる。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
龕から射している他界的の光、その中に立っている女方術師、
背後
(
うしろ
)
で燃えている唐獅子型の火炉、その上に
滾
(
たぎ
)
っている巨大な釜、……そうしてキラキラキラキラと、黄金の杖が輝いている。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
不図した些細なハヅミに由つて、私の凭れる廻転椅子は、睡りのやうにユラユラと滑り出しさうになり、そして、白い空虚な部屋の中には、此処にも矢張りもんもんと
滾
(
たぎ
)
る蝉の
音
(
ね
)
が木魂してゐた。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
と、体じゅうに、たちまち、彼らしい
滾
(
たぎ
)
りをもった。そして
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思へば胸は悲痛に
滾
(
たぎ
)
ち、跳ねて狂へば
ランボオ詩集≪学校時代の詩≫
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
頭にのぼり、煮え返り、
滾
(
たぎ
)
り泡だつ。
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
火鉢の上には鉄瓶が
滾
(
たぎ
)
つて居た。さうして、陰気な気持は妻の言つたとほりいやな天気から来たものだつた——と、彼は思つた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
その時蘭引はいよいよ、ちらついてきて、
滾
(
たぎ
)
り
嘯
(
うそぶ
)
く其聲は、聖エロイ樣の火箸で鼻を
撮
(
つま
)
まれた鬼の泣聲によく似てゐる。
錬金道士
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
広袤
(
こうぼう
)
八里のこの大都会の中には無量数百万の生活が犇めき合い、
滾
(
たぎ
)
り立ち、いま呱々の声を上げ、終臨の余喘に喘ぐ。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
滾
(
たぎ
)
りたつ激流をいくつか泳ぎわたり、海抜一万六千尺の漂石(氷河が押し出した堆石)の高原で形容を越えた苦難に苛まれながら、千二百里というたいへんな迂回路を一人で歩き通し
新西遊記
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その手で、す早く、
滾
(
たぎ
)
つて居る鉄瓶を下したが、再び莟を撮み上げると、直ぐさまそれを火の中へ投げ込んだ。——莟の花片はぢぢぢと焦げる……。そのおこり立つた
真紅
(
しんく
)
の炭火を見た瞬間
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
滾
漢検1級
部首:⽔
14画
“滾”を含む語句
滾々
滾滾
滾転
滔々滾々
滾〻
滾沸