湿しめり)” の例文
旧字:
や、老人としよりの早打肩。危いと思った時、幕あきの鳴ものが、チャンと入って、下座げざ三味線さみせんが、ト手首を口へ取って、湿しめりをくれたのが、ちらりと見える。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
進むにしたがって地盤が柔かくなり、ともすると長靴をずぶりと踏込んでしまう、そしていつか灌木をぬけて蘆の生えた湿しめりへ出たと思うと、急に眼前めのまえへ殺生谷の底無し沼が姿を現した。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はたたびの夕まぐれ、えのこるくも湿しめり
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
生物いきもの湿しめりで出来たのだよ。
と思うと、湿しめりッけのする冷い風が、さっと入り、洋燈の炎尖ほさき下伏したぶしになって、ちらりとあおく消えようとする。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほとんど土の色とまがう位、薄樺色うすかばいろで、見ると、柔かそうに湿しめりを帯びた、小さな葉がかさなり合って生えている。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)