湯煙ゆけむり)” の例文
更にまたさまざまの地獄から沸泉ふっせん湯煙ゆけむりを立てて流れて行く水路の底が美くしい碧玉へきぎょくの色に染まっていることを見逃すことは出来なかった。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
はじめ二目にもく三目さんもくより、本因坊ほんいんばう膏汗あぶらあせながし、ひたひ湯煙ゆけむりてながら、たる祕法ひはふこゝろむるに、僅少わづかに十餘子じふよしばんくや、たちまけたり。すなはひざまづいてをしへふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここは豆南ずなんの一角、海をへだてた大島の御神火ごじんかと対して、町に湯煙ゆけむりのたえない熱海あたみの湯治場。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十五けん間口、十間間口、八間間口、大きな(舎)という字をさながらに、湯煙ゆけむりの薄い胡粉ごふんでぼかして、月影に浮いていて、いらかの露も紫に凝るばかり、中空にえた月ながら、気の暖かさにおぼろである。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)