ぬくも)” の例文
真ん中に切った炉にはすで瀬戸ひきの鉄瓶がかけられ、いい加減ぬくもっている。無論、中味はただの湯ではない。
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
そのぬくもりさへ着物についてゐるのではないかと、自分の手をあてて見たりした、——やはり一途いちづに悦ばしかつたのだ、しかし旦那がああ云つたけど、一しよに行つていいものかどうか
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
互いの体のぬくもりが、互いの体へ通って行く。二人の心は恍惚となった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すそはうからおぬくもりなされませ、わすれても無理むりみちはなされますな。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
噫、病院の窓! 梅野とモ一人の看護婦が、寝衣ねまきに着換へて淡紅色ときいろ扱帯しごきをしてた所で、足下あしもとには燃える様な赤い裏を引覆ひつくらかへした、まだ身のぬくもりのありさうな衣服きもの! そして、白い脛が! 白い脛が!
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)