渥美あつみ)” の例文
「大分いろ/\な御意見が出たのですがね。ここにいらっしゃる渥美あつみ君、確かそうおっしゃいましたね。」三宅は、一寸ちょっと信一郎の方を振りかえった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
伊良虞いらごの島」は、三河渥美あつみ郡の伊良虞崎あたりで、「島」といっても崎でもよいこと、後出の「加古の島」のところにも応用することが出来る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
是を小豆あずきとともに煮たものをアヅキボウトウとも謂っている。三河の渥美あつみ半島では三十年余り以前、私も是をドヂョウ汁と謂って食わされて喫驚びっくりした。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
山の尾根から傳つて歩いてゐると、遠く渥美あつみ半島が見えた。またその反對の北の方には果もなく次から次とうねり合つた山脈が見えて、やがて雲の間にその末を消してゐる。
鳳来寺紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
渥美あつみノ海はあくまであおく、なぎさは白いを描いており、馬やら人やらで熱風を渦まいていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あゝ渥美あつみさんとおっしゃいますか。僕は生憎あいにく名刺を持っていません。青木じゅんと云います。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
越後も多分そうであろうと思う。これを烏よりも里の子供が楽しみにして、すぐに後から取りに行くことは、近畿地方の烏塚の風習、もしくは渥美あつみ半島の山神祭などとも似ている。
「浜松から遠くもない、こんな小島に長居ながいは危険です。わたくしの考えでは、夜のあけぬまえに、渥美あつみの海へこぎだして、伊良湖崎いらこざきから志摩しまの国へわたるが一ばんご無事かとぞんじますが」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菜の花が黒くなって、田も山も渥美あつみ平野も、こうしている間に、すっかり青くなった。この三州横須賀村へ着いた三月中旬からおよそ二ヵ月。ここでは、こよみのほかは何の変化も見られない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渥美あつみさんの御意見じゃ、『金色夜叉』よりも六七年も早く書かれた『たけくらべ』の方が、もっと早く通俗小説になっているはずだが、我々が今読んでも『たけくらべ』は通俗小説じゃありませんね。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
矢作平やはぎだいらの水害をせられたり、莫大な私財を投じて、よろいふちを埋め立てて良田と化し、黄金堤おうごんづつみを築いて、渥美あつみ八千石の百姓を、凶作のうれいから救い、塩田のわざをおすすめあそばすなど、どれほど
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)