深間ふかま)” の例文
よくよく訊けば、知事さまとおまえとは、昔からの深間ふかまな仲で、その知事さまをきつけたのは、おまえの親とその紅い唇じゃそうな
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
欽之丞は、そんな伝法でんぽうな口をききます。腕はよく出来ますが、旗本の冷飯食いで、およつの園花とは、二年前からの深間ふかまだったのです。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
今夜、仕事がすめば、ゆっくり遊ばしてやらあ——こう、作蔵、てめえ、千住に深間ふかまが出来たって話じゃあねえか?
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
深間ふかまになっていた男がほかの女に見かえたので、面当つらあてに誰とでも死にたがっていたのである。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
柳橋の芸妓梅乃家小歌が黒の羽織と仇名された深間ふかまのあったを、仲間の花次に奪われた面目の見せつけに、かねて執心の厚かった浜田の御前へ春泉の内儀からすがらせて
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
二人がズルズルと深間ふかまに陥る早さよりも、そうしたうわさの立つスピードの方が早かった。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さもあらば親方もり手も商い事の方便と合点して、あながちに間夫をせき客の吟味はせまじき事なるに、様々の折檻せっかんを加うるはこれいかに、その上三ヶ津を始め諸国の色里に深間ふかまの男とくるわを去り
二人の仲はあまりにも深間ふかま過ぎて、暗討まで仕掛けられた吾妻屋永左衛門にしても、寝覚ねざめのよくなかったことでしょう。
今申した浪人者はそれと、だいぶ深間ふかまで、何でも、二、三百石の知行ちぎょうを、その女一人のため棒に振ってまで、国元を、出奔してきた程な仲だったらしいので。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出の座敷に着る雛鶯ひなうぐいす欲のないところを聞きたしと待ちたりしが深間ふかまありとのことより離れたる旦那を前年度の穴填あなうめしばし袂を返させんと冬吉がその客筋へからまり天か命か家を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
「お小夜が勤めをして居る頃の深間ふかまで、淺川團七郎といふ弱い敵役見たいな名前の浪人者があつたんですつて」
深間ふかまの仲は、こうしていよいよ深間のを増し「もう離さない」「離れない」「いっそ、こうして」というような痴語口説ちごくぜつのあられもなさに、王婆さえ、時にはうんざりするほどだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お小夜が勤めをしている頃の深間ふかまで、浅川団七郎という弱い敵役みたいな名前の浪人者があったんですって」
ちょいと金があって好い男で、へえけえは下手だが小唄と鼓の上手で、これは間違いもなく薄墨の深間ふかまだったそうですよ。今は浪々の身で金っ気とは縁が無い。
「新宿で勤め奉公をしてゐる時、あのお吉さんと番頭の才八どんは、深間ふかまだつたさうですよ」
何處のどんな女が深間ふかまなのか、それが知りたいのだよ
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
してゐる頃の深間ふかまだつたといふ話——
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)