りょう)” の例文
しかしすこしも遠慮や窮屈は知らないように、部屋いっぱいくつろいで坐りながら、大きく扇子をうごかして、ふところへりょうをとっていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜に入ると流石さすがに猛威をふるった炎暑えんしょも次第にうすらぎ、帝都の人々は、ただもうグッタリとしてりょうを求め、睡眠をむさぼった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分はもう寝ているのに、戸外にはまだりょうを逐うて歩く人が絶えぬらしく、足音だの、話声だのが聞える。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
稲葉山の城主斎藤義竜さいとうよしたつは、法華寺の別院でりょうをとっていた。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼は窓ぎわにりょうをとるような恰好かっこうをしながら、その実、例の鏡の裏から読みとった新しい暗号の発展を脳裡のうりに描いていた。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのあいだに、常葉ときわの局は、唐団扇からうちわで横からりょうを送り、百合殿ノ小女房は、天目台てんもくだいにのせたお薬湯のわんをすすめた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
琵琶びわにも、今宵は底浪が立ち騒いでいて、松から松の間には茶屋の灯もなく、またりょうをいれる人影もない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)