流行児はやりっこ)” の例文
旧字:流行兒
スバラシイ花輪や流行児はやりっこの歌い手らしい男や女の写真が、四方の壁一パイに並んでいる店の広間へ、縦横十文字に並んだ長椅子にりかかった毛唐と女唐めとうとが
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いいえ、たった五人です。一番の流行児はやりっこが選ばれて此処まで練って来るのです。斯ういう具合に若い衆が後方うしろから日傘を翳しかけましてな。綺麗な禿かむろが供をしましてな。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
吉原なかではいま流行児はやりっこですが、無理強いに飲まされて少し酔っているのと、土地に馴染がないから、気が詰っていけないと言い出して、とうとう船の中に残ることになり
紅葉門下の風葉ふうよう鏡花きょうか徐々そろそろ流行児はやりっことなり掛けた頃には硯友社の勢力は最早峠の絶頂を越していた。
僕がもっとも崇拝すうはいする人物はキリストのほかにソクラテスとリンカーンであるが、二人とも生きているあいだに名声さかんで、一時流行児はやりっことなって大いにもてはやされたが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一口に酌婦しゃくふとは云うものの、お葉は柳屋の一枚看板で、東京生れの気前はし、容貌きりょうも好し、山の中には珍しい粋なねえさんとして、ここらの相場を狂わしている流行児はやりっこである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「どうだい? 女形おやま、驚いたかい? ふふ、鳩が豆鉄砲を食ったような、きょとんとした顔をしてサ——いい流行児はやりっこが、日本一の人気者が、何て馬鹿らしい顔をして見せるのサ?」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
俺は無名の作家たちが、文壇の流行児はやりっこの悪口を思う存分にいい合って、自分たちの認められない腹癒はらいせをする場合を、考えることができた。俺と吉野君との会話も、ほとんどそれに近かった。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)