河東かとう)” の例文
あのころ、パリに遊びに来ていた豊沢大掾だいじょうがこれを聞いて、河東かとう荻江おぎえのウマ味だと、うがったことをいったが、歌うという芸道もここまでくると、もう東洋も西洋もない。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
けだし元帝兵を挙げて賊をちゅうけいに入らんことを図る。時に河東かとう王誉おうよ、帝に従わず、かえって帝の子ほうを殺す。帝鮑泉ほうせんりて之を討たしめ、又おう僧弁そうべんをして代って将たらしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
八重唯舞ふ事をくするのみにあらず哥沢節うたざわぶしは既に名取なとりなり近頃また河東かとうを修むと聞く。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
当時栄玄の妻は既に歿していたから、これは河東かとう獅子吼ししくを恐れたのではなく、全く主人の性癖のためであった。抽斎は五百にはかって苫を貰い受け、後下総しもうさの農家に嫁せしめた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼は河東かとうにおける開国ごろの名将呼延賛こえんさん末裔まつえいで、兵略に通じ、よく二本の赤銅あかがねむちをつかい、宇内うだいの地理にもあかるく、梁山泊征討の任には、打ってつけな武人かとおもわれます
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この二絃琴の特長は粋上品いきひとがらなのである。荻江節おぎえぶし一中いっちゅう河東かとうも、詩吟も、琴うたも、投節なげぶしも、あらゆるものの、よき節を巧みにとり入れて、しかも楽器相当に短章につくったところに妙味があった。