氣紛きまぐ)” の例文
新字:気紛
相變らずの氣紛きまぐれらしい樣子に、平次は大した氣にも留めず、煙草を呑んで茶をすゝつて、お墓詣りらしい三崎町の往來を眺めてゐると
後で解つたが、名はお芳と云つて、稼ぐ時は馬鹿に稼ぐ、なまける時は幾何いくら主婦おかみに怒鳴られても平氣で怠ける、といふ、隨分氣紛きまぐれ者であつた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
氣紛きまぐれに御厄介ごやくかいけますのです。しかし、觀光くわんくわうきやく一向いつかうすくないやうでございますな、これだけのところを。」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私はその挨拶に應じるやうな、しとやかさも優雅さも返すことが出來なかつたらうから。しかしひどい氣紛きまぐれであつかはれたので、私もお義理な氣持に縛られなくて濟むのであつた。
平次はもう一度、この男を見直して、新しいスタートから、この事件の探索をやり直す氣になつたのは、決して氣紛きまぐれではなかつたのです。
昔の氣紛きまぐれで(彼のやうな性急せつかちな、我儘な性質のものにはよくある缺點だ)、彼が、弱點を掴まれてしまふやうな破目はめに落ち、今更、ふり拂ふことも、無視することも出來なくなつてゐて
事件は容易ならぬ形相で、久良山三五郎がきめてしまつたやうな、氣違ひの氣紛きまぐれでないことはあまりにも明らかです。
あなたは、だから、すべての小さな氣紛きまぐれや、感情の上の些細ささいな困難や躊躇や、單に一個人の傾向の度合や種類や強さ、やさしさなどに對する危惧きぐを乘り超えて直ぐにその結合に這入つて了ふでせう。
「あのきりやうでも、子さらひをするやうぢや鬼だ。お前の名をかたつたのは氣紛きまぐれだらう。變な氣を起すなよ。八」
「親父は氣紛きまぐれで、柄の良いのは私に呉れませんよ。年を取つても浮氣つぽいから、何處かの人にやるんでせう」
兩國の橋架はしげたに隱れて、若い女を四人まで半弓で射たんだよ、——氣紛きまぐれや陽氣のせゐで、そんなことを
合せる人間があるものか。それは、死んだあとで曲者が直してやつたのだよ。流しや氣紛きまぐれの殺しぢやない。女の身内の者か、亭主か情夫いろか、かゝはりのあるものの仕業だ
これはまさに造化の神の氣紛きまぐれとでもいひませうか、大あばたで鼻が曲つて、唇はみにくく引吊つて居る上、横幅の方が廣いやうな身體で、念入りにびつこさへ引いて居るのです。