歯磨はみがき)” の例文
旧字:齒磨
だが諸君、だがね諸君、歯磨はみがきにも種々いろいろある。花王歯磨、ライオン象印、クラブ梅香散……ざっとかぞえた処で五十種以上に及ぶです。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
砂原にはライオン歯磨はみがきの大きな立看板があり、鉄橋の方を時々、汽車がごうと通って行った。夢のように平和な景色があったものだ。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
来る途中とちゅう小間物屋で買って来た歯磨はみがき楊子ようじ手拭てぬぐいをズックの革鞄かばんに入れてくれた。そんな物は入らないと云ってもなかなか承知しない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
窓の下はコールタのげたトタンぶきの平屋根で、二階から捨てる白粉おしろい歯磨はみがきの水のあとばかりか、毎日掃出はきだちりほこりに糸屑いとくずや紙屑もまざっている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
坐舗の一隅いちぐうを顧みると古びた机が一脚え付けてあッて、筆、ペン、楊枝ようじなどを掴挿つかみざしにした筆立一個に、歯磨はみがきはこと肩をならべた赤間あかますずりが一面載せてある。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「それからこれシャボンと歯磨はみがき
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
御作さんは、すぐ台所の方へ取って返して、楊枝ようじ歯磨はみがき石鹸しゃぼん手拭てぬぐいまとめにして、さあ、早く行っていらっしゃい、と旦那に渡した。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)