檜林ひのきばやし)” の例文
なぜならば、檜林ひのきばやしいわやには、やぶ蚊のように、僧兵がかくれていたのだ。わざわざ敵の中を駈けて通ったようなものだった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巻向の檜林ひのきばやしは既に出た泊瀬はつせの檜林のように、広大で且つ有名であった。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
と、二筋ふたすじの道を見廻していると、やや上りになった檜林ひのきばやしの暗い蔭に、一人の女が泣いている。檜にもたれて泣いている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清浄な檜林ひのきばやしを見つけた。わしは老母おふくろ空骸なきがらを千年ごけの下に埋めた。くわは近くの小挽こびき小屋から借りて来たものだった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、おの木魂こだま檜林ひのきばやしの奥から静かにひびいていた。光秀は、従兄弟の手に、旗でくるんだ叔父の首級くびをあずけて
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おいおい、おいおい。そんな方角ほうがくじゃあない。もっと右の方だ、右の方の道をりろ。まだまだずッとさわの方——あの檜林ひのきばやしがこんもりしげっている向こうの谷だ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暗緑な谷の檜林ひのきばやしのなかに、それが、あざやかに白い人影なので彼がたれか来ると、指さしたのは、すでに、何者だろうという疑いを充分にふくんでいることばなのです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔雀くじゃくなかを見るような燦鬱さんうつとしてっさおな、檜林ひのきばやし急傾斜きゅうけいしゃ、それが目の下に見おろされる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに隣して、檜林ひのきばやしに深く沈んでいる方の屋根が“龍泉殿”正季の屋敷である。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四隣は深い檜林ひのきばやしだ。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)