横着よこづけ)” の例文
車夫は呼交わしてそのまま曳出ひきだす。米は前へ駆抜けて、初音はつねはこの時にこそ聞えたれ。横着よこづけにした、楫棒かじぼうを越えて、前なるがまず下りると、石滝界隈かいわいへ珍しい白芙蓉はくふようの花一輪。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ホテルの玄関に、横着よこづけになつた一台の自動車があつた。それは昔の恋人の危急に駭いて、瀕死の床を見舞ふべく駈け付けて来た直也だつた。熱帯地に於ける二年の奮闘は、彼の容貌をも変へてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
横着よこづけになし平石次右衞門池田大助下座敷げざしき平伏へいふくす時に越前守にはつぎ上下にて敷臺迄出迎いでむかへ上段の間へ案内あんないし是にて暫く御休息遊ごきうそくあそばすべし其内には伊豆守參上仕つるべしとて退しりぞかるみすの前には常樂院赤川大膳藤井左京諏訪右門すはうもん各々威儀ゐぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ホテルの玄関に、横着よこづけになった一台の自動車があった。それは昔の恋人の危急におどろいて、瀕死ひんしの床を見舞うべくけ付けて来た直也だった。熱帯地にける二年の奮闘は、彼の容貌ようぼうをも変えていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
當所評定ひやうぢやう落着日らくちやくびに付役人共町役所に相詰あひつめ居るによりぢきに役所へ御出有てしかるべしと申にぞ小左衞門承知なし町役所へと急ぎ行やがて遠州榛原郡はへばらごほり相良さがらの城下根來ねごろ町役所へ横着よこづけ乘込のりこみたりされば詰合の役人共大いに驚き何事やらんと早速尋ぬるに諸國巡見使松平縫殿頭ぬひのかみ使者牧野小左衞門なりと云ながら駕籠より立出刀引提ひきさげ役所の上座へとほりければ諸役人下座へ引下り一同平伏へいふくす時に小左衞門重役衆と聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)